県内大学と産学連携!ウイング社員がAI技術の研究結果を発表しました

近年、目覚ましい発展を遂げているAI技術。私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
ウイングの研究開発室(RD)は、革新的な技術をいち早く取り入れ、お客様に新たな価値を提供するための研究開発に取り組んでいます。(RDの部署紹介は、以下記事をご覧ください。)
今回のブログではRDの取り組みの一つである、県内大学との共同研究についてご紹介します。
-研究の概要
今回の共同研究では「RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用した論文検索の効率化」に取り組みました。
大学との共同研究ということで、学内で利用機会の多い専門的な学術論文に着目し、昨今賑わいを見せているRAGを活用して初学者が効率的に論文を探すことができる論文検索システムの開発を目的に研究を行いました。

研究を行うにあたり、まず学生へのアンケートを実施し、論文検索システムに求められる要件を明確にしました。ユーザー視点から見た検索のしやすさや、検索結果に対する確認のしやすさについて定めたものが含まれます。
学生へのアンケート結果から設定した検索システムの要件
・検索の目的や論文の特徴を入力することで、必要な論文を検索できること
・検索結果の上位に、検索の目的に適した論文が表示されること
・論文の要約を表示し、かつ本文から検索の目的と密接に関連する箇所をハイライト表示することで、論文が検索の目的に適しているか判断できること
・著者情報や研究分野などの基本情報を確認できること
これらの要件を踏まえ、本番を想定した論文データと自然言語による検索クエリを用いて、検索結果上位3件以内に現れる割合が90%以上を目標に検証が行われました。
-研究結果と考察
およそ5か月にわたる検証の末、実際に論文を探す機会のある学生によるシステムの評価が行われました。
評価の結果、総合的に目標としていた検索結果上位3件以内に現れる割合が90%以上を達成することができました。また、アンケートでは、「従来のキーワード検索よりも効率的に論文を検索できる」と高い満足度を得ることができました!

一方、今回の研究では課題も明らかになりました。例として、二つご紹介します。
一つは、データの前処理に工数がかかることです。自動化が困難な処理は手作業により対応し、時間と労力を要しました。もう一つは、専門用語に関わる検索の難しさです。論文には専門用語や略語が頻繁に登場しますが、使用しているAIモデルが事前に学習していない用語については、適切な検索結果を得ることが難しい場合があることがわかりました。
ウイング社員に研究の感想をきいてみました
本研究では、手探りの状態から論文の特性に着目した独自の総合的アプローチ(前処理、検索など)を考案しました。当初はその妥当性に不安もありましたが、特性に基づく実証的根拠を段階的に積み重ねることで方向性を確立しました。 さらに、このアプローチの検証においては、大学との連携が大きな力となりました。企業視点だけでは見落としがちな、厳密な評価指標の選定や結果を客観的に判断するための目標設定の重要性など、研究者の学術的視点から検証方法について具体的な助言を得ました。これにより、システムの実用性の確認に加えて理論的な裏付けを伴った検証が実現し、学術的な検証手法を組み合わせることで、研究の信頼性や質を向上させられることを実感する貴重な経験となりました。 今回の経験は、今後の研究開発を進める上で大変貴重な財産となりました。
大学との共同研究において、RDの成果として初めて発表できたことを大変嬉しく思います。 大学の先生方や学生の皆様からは、社内だけでは得られない貴重なご意見やご感想をいただき、研究の進展にご助力いただきました。また、実際に大学の環境でユーザー検索行動を再現していただき、客観的な評価を通じて実用的な検証結果を得ることができました。 本研究を通じて、ご協力いただいた関係者の皆様に深く感謝いたします。 今回頂いた学術的な知見を真摯に受け止め、今後のAI文化の発展に向けてさらなる努力を重ねてまいります。
上司からメンバーに対してコメントをいただきました
今回の活動は、入社1~2年目の経験の浅いメンバーで構成されたため、管理推進する立場としては正直厳しい布陣でした。彼らにとって、研究開発も、外部との打ち合わせも、AIも、RAGも、資料作成も、すべてが未経験の領域からのスタートだったからです。
それにもかかわらず、彼らは自ら考え、行動する姿勢を崩さず、責任を持って仕事に取り組みました。その結果として今回の成果にたどり着いたことは、大いに称賛に値します。
一方で、今後の課題としては、「ITを活用して何の役に立ちたいのか」「何を成し遂げたいのか」といったビジョンや情熱が、まだ十分に育っていない点が挙げられます。彼ら自身が強い思いを持ち、それを語る日が来るのを楽しみにしています。
-同研究に関する発表会が開催されました

発表会に参加したウイング社員に感想を聞いてみました
今回の発表はポスターセッションの形式で行われました。RDとしては、公の場で成果を発表するのは今回が初の機会であり、不安はありましたが、いざ始まると多くの参加者が発表内容に関心を持ち、ポスターの前で足を止めてくださりました。参加者の皆さんと活発に意見交換を行うことができ、部署としても、私個人としても、大変学びの多い場になったと感じております。特に、RDはお客様との接点が少ない部署であるため、このように社外の方々と交流する機会は貴重であり、普段の活動からは得られない知見を多く得ることができました。今後もこのような機会があれば積極的に参加し、社外の方々との交流から得た知見を社内に持ち帰りたいと思います。
-AI技術を活用したさらなる社会への貢献を目指して
今回の研究で得られたデータの処理や検索プロセスに関する知見は、論文検索システムのみならず、社内ナレッジの管理や顧客対応の支援、様々な分野への応用が期待できます。
これからもRDは、お客様に新たな価値を提供するための、研究開発に取り組んでいきます。私たちと一緒に最新技術に触れられる仕事をしてみませんか?
ウイングでは一緒に成長していく仲間を募集しています。
