【社内事例】Dify×自社ストレージでセキュアなRAGを構築!資料探しを「10分→1分」に短縮した開発効率化の裏側
生成AIの業務活用が急速に進む中、多くの企業様で共通の課題となっているのが「社内ナレッジの効率的な検索(RAG:検索拡張生成)」ではないでしょうか。 私たちウイングでも、日々の開発業務の効率化と属人化の解消を目指し、オープンソースのLLMアプリ開発プラットフォーム「Dify」を活用した「社内質問箱(AIチャットボット)」を構築・運用しております。
今回は、実際に弊社のプロジェクト現場で稼働している本システムの「技術的な仕組み」と、それによって得られた「具体的な時短効果」について、社内での取り組み事例としてご紹介いたします。
-なぜ「Dify」を選んだのか?
今回、社内RAGの基盤として数あるツールの中から「Dify」を採用した理由は、大きく分けて「開発スピード」と「徹底したセキュリティ」の2点です。
■ 非エンジニアでも運用可能な開発スピード
Difyには、LLM活用に必要な機能(プロンプト管理、ベクトルDB連携、ログ機能、UIなど)が標準で備わっています。これにより、ゼロから開発する場合に比べて大幅な工数削減が実現しました。また、ノーコードでカスタマイズが可能なため、技術者以外でも改善プロセスに参加できる点も大きな魅力です。実際、弊社のインターンシップでは、新潟県内大学の学生の皆さんと協力し、非エンジニア主体でRAGの回答精度や出力形式の検証を行うといった素晴らしい成果も生まれています。

■ 企業利用に不可欠なセキュリティ対策
RAGを業務導入する際、最大の懸念事項となるのが「情報漏洩リスク」です。本システムでは以下の構成により、高いセキュリティレベルを担保しています。
- 社内データの保護: OSS版のDifyを自社環境(社内ネットワーク内)にホスティングしているため、機密データが外部のサーバに保存・蓄積されることはありません。既存のセキュリティポリシーをそのまま適用可能です。
- AIモデルの安全性: LLM基盤には「Azure OpenAI Service」を採用しています。Microsoftのセキュリティ規約に準拠し、入力データがモデルの学習に利用されない契約形態をとっているため、安心してお使いいただけます。
-システムの仕組み:社内ストレージとの自動連携
本システムは、弊社が利用しているファイルストレージ上の実データを知識の源泉(ナレッジソース)としています。
- 対象データ: 実際の開発案件情報(PJ情報)、就業規則など
- 自動更新フロー:
- 利用者はこれまで通り、フォルダ内のファイルを更新・保存する。
- スケジューラーが定期的に「更新差分」を検知。
- 差分データを簡易クレンジング(形式の正規化)し、RAGへ自動取り込み。原本ファイルには影響を与えない安全な設計です。
この仕組みにより、開発現場のメンバーは特別な登録作業を意識することなく、常に最新のドキュメントに基づいた回答を得ることが可能になっています。
-【現場の声】導入効果と「ナビゲーション」としてのリアルな活用法
実際に本システムを利用している開発現場(大規模開発案件チーム)のメンバーに、その効果を聞いてみました。
■ 検索時間が「10分」から「1分」へ大幅短縮
導入前は、仕様確認や過去の経緯を調べる際、深いフォルダ階層を辿り、複数のファイルを開いて検索する必要がありました。これには1件あたり10分以上かかることも珍しくありませんでした。
RAG導入後は、自然言語でチャットに質問するだけで関連資料や該当箇所が提示されます。初動調査の時間が数十秒~1分程度に激減し、「どこに書いてあるか分からない」状態から、瞬時に「確認すべき資料の目星がついている」状態へと変わりました。これは業務効率化において劇的な変化です。

■ 「答え」ではなく「ナビゲーション」として使う
現場での興味深い知見として、「AIに完璧な回答を求めすぎない」という実践的な使い方のコツが挙げられます。
- 仕様確認・初動調査: 「〇〇機能の仕様は?」と聞き、関連するドキュメントや記載箇所を特定する。
- 改修時の影響調査: テーブル変更時に、その項目を使用している機能の洗い出しを行う(完全網羅でなくとも、調査範囲が絞り込まれるだけで大幅な時短になる)。
- 「うろ覚え」検索: ファイル名が思い出せなくても、内容について質問すれば過去の議事録や資料にたどり着ける。
このように、RAGを「最終的な回答を出すマシン」ではなく、「必要な情報へ最速でたどり着くためのナビゲーションツール」と位置付けることで、AI特有のハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクを許容しつつ、最大限のメリットを享受しています。
■ 開発現場以外でも活躍!「社内規定」のRAG化
本システムは開発プロジェクトのナレッジ共有だけでなく、全社的な取り組みとして「社内規定(就業規則など)」のRAG化にも活用されています。 例えば、「〇〇休暇の申請フローは?」「出張時の経費精算のルールは?」といったバックオフィス(総務・人事)へのよくある質問に対し、社員がAIを通じて自己解決できる環境を整えています。これにより、質問する側の心理的ハードルを下げるだけでなく、回答する管理部門の業務負担軽減にも貢献しています。

-今後の展望
現在はファイルストレージとの連携が中心ですが、Difyの高い拡張性を活かし、今後は以下のツールとの連携も視野に入れています。
- SVN / Redmine連携: リポジトリ内のドキュメントやチケット情報をナレッジとして取り込み。
- Slack連携: 日々のチャットフローの中にRAGを組み込み、若手メンバーがさらに質問しやすい環境を構築。
さらに、弊社では生成AIの活用を「検索」だけにとどめず、業務プロセス全体のAI化を進めています。 例えば、日々の会議において「Gemini等の生成AIを用いて自動作成した議事録」をストレージに保存し、それを即座にDifyが読み込んでRAGのナレッジとして横断検索できるようにするといった、「AIが生成したデータを、別のAIが活用する」というシームレスな連携サイクルも実践・検証中です。
ウイングでは、「日本の企業をITで元気にすること」をミッションに掲げています。 今回のような「社内規定のRAG化」や「議事録のAI連携」をはじめ、今後も社内での生成AI活用事例を積極的に増やし、自社実践で得られた最新技術のノウハウをお客様のDX推進や課題解決へと還元してまいります。


