古いシステムの落とし穴と見直しのヒント

「レガシーシステムの見直しをしたいが、なかなか踏み出せない」そんなお悩みを持つ企業がいま増えています。

業務を長年支えてきたシステムが、気づけば“足かせ”になっていませんか?

本記事では、「レガシーシステム」とは何か、なぜ問題なのか、そしてどう見直せばよいのかを、DXの視点からわかりやすく解説します。

目次

レガシーシステムとは?古くなった業務システムの定義

「レガシーシステム」とは、古い技術や開発言語で作られた、保守・運用に課題のある業務システムのことです。

10年以上前に導入され、今も使い続けている基幹システム、オフィスコンピュータ、Excelベースの業務ツールなどが該当します。

例:

  • COBOLやVBなど、保守エンジニアが減っている言語で作られたシステム
  • カスタマイズされすぎて中身が分からない販売管理システム
  • 他システムと連携できないオンプレミス(自社運用)の在庫管理ツール

このような“古いシステム”は、業務の変化に対応しづらく、結果として業務効率化やDX推進の足を引っ張る存在になります。

レガシーシステムが抱える5つのリスク

1. 保守・改修が困難

レガシーシステムの多くは、COBOLやVB、古いJavaバージョンなど、今では使い手が少ない言語で開発されています。これらを扱えるエンジニアは高齢化しており、採用・確保が極めて困難です。

加えて、コード自体がスパゲッティ状態(プログラムのソースコードが非常に複雑で、理解しにくく、保守が困難な状態)で整備されていないことも多く、「触るのが怖い」「一部を直したら別の不具合が出た」といった声が現場から上がることもしばしば。

そのため改修はベンダー任せになりがちで、ちょっとした画面変更でも見積もりが予想以上に高額になったり、納期は数週間〜数カ月になるケースも。これが積み重なると、システムの改修自体を諦めざるを得ず、業務は旧態依然のまま停滞します。

2. 現場業務とズレが生じる

時代とともに業務プロセスは進化していきます。商品構成が変わる、取引先が増える、法改正に対応する――そんな変化にレガシーシステムは柔軟に対応できません

結果として、現場では「システムに合わせた運用」が強いられ、非効率な手作業や二重入力が常態化。
たとえば、システムに存在しない項目を紙やExcelで管理する、帳票を一度出力してから手書きで追記して再スキャンするといった“場当たり対応”が増えてしまいます。

さらに、「どうせ変更できない」と諦めの空気が生まれ、業務改善のモチベーション自体が低下するという悪循環に陥ることもあります。

3. ブラックボックス化している

レガシーシステムは、長年にわたって場当たり的に改修が繰り返されてきた結果、誰もシステムの全体像を把握していない“ブラックボックス”になっていることが多くあります。

開発を担当した社員が退職した後、ドキュメントもないまま仕様が不明瞭になるケースは珍しくありません。仮に不具合が発生しても、原因を突き止めるのに膨大な時間がかかり、顧客対応に支障を来すことさえあります。

また、仕様が社内に共有されていないため、新人教育にも支障が出やすく、担当が替わるたびにゼロからの解析を強いられる非効率な体制になりがちです。

4. 他ツールと連携できない

レガシーシステムは、クラウド非対応であったり、API(外部連携の仕組み)が存在しなかったりと、他の業務システムとの連携が難しいのが大きな課題です。

たとえば、最新のSaaS型会計システムや物流管理ツールと連携させようとしても、CSVで手動連携するしかないなど、人手に頼らざるを得ない工程が残ってしまいます

この結果、全社横断でDXや業務自動化を進めようとしても、レガシーシステムがつなげない・流せない・止められない、といったボトルネックとなるのです。

また、業務ごとにデータのサイロ化(部署などの単位でデータが分割されている状態)が起きてしまい、経営判断に必要な全体データをリアルタイムで把握できないという弊害もあります。

5. セキュリティリスクが高い

レガシーシステムは、OSやミドルウェアがすでにサポート終了しているケースが少なくありません。セキュリティパッチも提供されず、ウイルスやランサムウェアの脅威に対して無防備です。

また、古い通信プロトコルや暗号方式を使っていたり、社外ネットワークとの分離が曖昧だったりと、現代なら当然対処しているはずのリスクが放置されていることもあります。

それにも関わらず、「誰も触れないから」という理由でそのまま放置されている場合も多く、情報漏洩や停止事故が起きたときの責任追及リスクも高まります。

特に2020年代以降、サイバー攻撃の標的は大企業だけでなく中小企業にも広がっており、レガシーシステムは格好の標的となってしまいます。

「そろそろ限界かも?」レガシー刷新すべきサイン

以下のようなサインが見られる場合は、レガシーシステムの刷新を本格的に検討すべきです。

  • 改修・運用に時間やコストがかかりすぎる
  • 利用マニュアルがなく、属人化している
  • 使いにくく、若手社員に敬遠されている
  • 業務の変化に対応できず、裏作業が増えている
  • 他システムとの連携に難がある

レガシーシステムの見直しを成功させる5つのヒント

① 現状把握から始める

レガシー刷新の第一歩は、「今、何が動いていて、どこに課題があるか」を正しく把握することです。
これを怠ると、実際に使われていない機能に時間やコストをかけてしまったり、本当に必要な業務を見落としたりする恐れがあります。

具体的には、以下のような棚卸し・可視化が有効です。

  • どの部署で、どの機能を、どの頻度で使っているか
  • データ入力や出力がどのように行われているか
  • システム以外(Excelや紙)で補完している業務はないか
  • 開発・保守ベンダーとの契約状況や費用感
  • OS・言語・ミドルウェアのバージョンなど技術的な陳腐化の度合い

このように業務とシステムの現状を見える化することで、「全部作り替える必要はない」「ここだけ直せば現場の負担が減る」といった優先順位やスコープ(改修範囲)が見えてきます。

② 業務改善を先に考える

レガシー刷新は「システムを入れ替えること」ではなく、「業務をより良くすること」が本来の目的です。

しかし実際には、「ベンダーから提案された最新ツールに乗り換える」ことをゴールにしてしまい、本質的な業務改善が置き去りになるケースが多くあります。

たとえば

  • 現場の要望を聞かずに導入を進めた結果、誰も使わなくなった
  • 業務フローが見直されていないため、ツールだけ変わって負担が増えた

といった失敗は珍しくありません。

まずは現場の課題や非効率を整理し、「この業務をどう変えたいか」→「それを支えるにはどんな仕組みが必要か」という順番で考えることが成功のカギです。
この段階では、ツール名やベンダーの話は後回しで構いません。

③ 小さく始めて成果を出す

レガシー刷新というと、「基幹システムをフルリプレース」「5年かけて一括導入」といった大規模プロジェクトをイメージしがちです。
しかし、それは予算やリスクが大きく、途中で頓挫する危険もあります。

むしろ推奨されるのは、「小さく始めて、小さく成功する」アプローチです。

たとえば:

  • 紙やExcelで管理している申請業務を、ノーコードツールでWeb化
  • ファイルサーバで散らばっている文書管理を、クラウドに一元化
  • 入力ミスの多い受発注業務を、フォーム連携で自動化

このような“手が届く範囲の改革”から着手することで、成果も見えやすく、現場のモチベーションや社内の評価も得やすくなります。
「変えたらこんなに便利になった」という体験が、次のステップへの原動力になります。

④ KPIで効果を可視化する

レガシー刷新では、成果が見えにくいと社内の理解や継続が得られません。
そこで重要になるのが、KPI(重要業績評価指標)の設定と振り返りです。

たとえば以下のような指標が使えます:

  • 申請や入力作業の工数削減(例:1件あたりの処理時間が10分→3分に)
  • 作業ミス・エラー数の減少(例:月に5件の入力ミスが0件に)
  • 紙使用量の削減(例:月間2,000枚 → 500枚)
  • 作業人数・残業時間の削減
  • 担当者の満足度やシステム利用率の向上

これらのKPIを定期的にレビューし、「何がうまくいったか」「次はどこを見直すか」をチームで共有することで、単なる導入プロジェクトではなく“改善のサイクル”として定着していきます。

⑤ 継続的な改善文化を育てる

レガシー刷新は、1回限りの「完了型プロジェクト」ではありません。
むしろ、変化が激しい時代だからこそ、“変わり続ける力”が求められるのです。

成功のためには、「業務やシステムは改善していくもの」「現場の声を吸い上げ、すぐ試して改善できる」という文化を育てることが欠かせません。

そのために有効な取り組み例として:

  • 定期的な振り返りミーティングを設け、改善アイデアを共有する
  • 現場からの改善提案を制度化(例:提案制度・表彰制度)
  • IT部門と業務部門が日常的に対話する関係をつくる
  • ノーコード/ローコードツールを活用して、現場主導の改善を支援する

これにより、「改善の主体は現場」「ITは現場のパートナー」という意識が浸透し、トップダウンではなくボトムアップで持続するDX体質の組織へと近づいていきます。

GeneXusで進めたレガシー刷新の成功事例

事例1:大手金融機関における営業店システムの刷新

背景と課題:
ある大手金融機関では、営業店で使用されていたシステムが老朽化し、業務効率の低下や保守コストの増大が課題となっていました。また、専用端末の数が多く、柔軟な業務対応が難しい状況でした。

取り組みと成果:
同社は、ローコード開発ツール「GeneXus」を全面採用し、営業店システムを刷新しました。これにより、開発工期を従来の半分以下に短縮し、専用端末の数も大幅に削減されました。新システムはタブレットや着脱可能なパソコンでの業務処理が可能となり、業務の柔軟性と効率性が向上しました。

事例2:製造業における基幹システムの刷新と内製化の実現

背景と課題:
ある製造業の企業では、基幹システムが老朽化し、保守コストの増大や業務効率の低下が課題となっていました。また、システムの内製化が進まず、外部ベンダーへの依存度が高い状況でした。

取り組みと成果:
同社は、GeneXusを活用して基幹システムをアジャイルで再構築しました。これにより、保守コストを従来の1/4に削減し、システムの内製化を実現しました。また、データの一元管理が可能となり、リアルタイムな情報取得や業務生産性の向上が図られました。

他社はどう変革した?GeneXus導入による業務改善・システム刷新の事例集を無料公開中

弊社のGeneXus開発事例をご覧いただける無料ダウンロードページをご用意しました。レガシー刷新に悩む方も、DXのヒントを探す方も、必読の内容です。

【掲載事例(一部抜粋)】
・メインフレームからの脱却(JR東日本レンタリース)
・サポート切れシステムの刷新(ノバレーゼ)
・建築・製造・食品・小売など業種別の改革事例 など

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古いシステムからの“脱却”は、未来への第一歩

レガシーシステムは、長年業務を支えてきた大切な存在です。
しかし、変化の激しい時代においては、その“慣れ”が成長の妨げになることもあります。

「古いけど、なんとかなっている」から「本当は変えるべきだった」となる前に、今こそ見直すチャンスです。
まずは、小さな業務からでも構いません。現場の声に耳を傾け、持続的な改善の第一歩を踏み出しましょう。

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