レガシーシステムとは
近年、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、多くの企業が直面している課題の一つが「レガシーシステム」です。
レガシーシステムとは、長年稼働してきた旧型のコンピューターシステムのことを指します。
具体的には、1980年代~1990年代頃に開発されたメインフレームやオフコン(オフィスコンピュータ)と呼ばれる大型コンピューターで稼働しているシステムなどが該当します。当時は最先端だったこれらのシステムも、現代の技術と比べると性能や機能が大きく劣り、様々な問題を引き起こす可能性があります。
2025年の崖問題との関係
そして、近年レガシーシステムと関連して深刻な問題として浮上しているのが、2025年の崖問題です。
2025年の崖問題とは、2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」の中で提唱されたものです。レポートでは、2025年以降、日本企業は既存システムの複雑化・ブラックボックス化といった課題から、レガシーシステムの刷新をうまく実現することができず、年間で最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らし、「2025年の崖」と表現されました。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムの問題点は多岐にわたります。
1. 運用コストの増加
古い技術で作られているため、保守・メンテナンスに多くの費用がかかります。システムの改修や更新にも多額の費用が必要となります。
2. システム障害のリスク
老朽化によるシステム障害が発生しやすくなります。また、近年は自然災害の増加なども懸念されており、システム障害のリスクはさらに高まっています。
3. セキュリティ脆弱性
最新のセキュリティ対策に対応できていない可能性があり、情報漏洩などのリスクが高まります。近年はサイバー攻撃も巧妙化しており、レガシーシステムは格好の標的となってしまいます。
4. ビジネスチャンスの損失
変化の激しい現代社会において、新しいニーズに対応したシステム開発が困難になり、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。顧客ニーズや市場環境の変化に対応できないシステムは、企業の競争力を低下させてしまいます。
5. 人材不足
レガシーシステムを扱える人材が不足しており、運用・保守が困難になる可能性があります。レガシーシステム特有の知識や技術を持つ人材は限られており、後継者育成も課題となっています。
6. 拡張性の低さ
新しい機能を追加したり、システムを拡張したりすることが困難です。現代のビジネスは常に変化しており、システムもそれに対応できる柔軟性が求められます。
7. 標準規格への非対応
近年主流となっている標準規格に対応していない可能性があり、他システムとの連携やデータ連携が困難になります。システム間の連携がスムーズに行えないと、業務効率の低下やコスト増加につながってしまいます。
8. 煩雑な運用
複雑な構造や古い技術で作られているため、運用・保守が煩雑になり、作業効率が低下します。また、トラブル発生時の対応にも時間がかかり、業務に支障をきたす可能性があります。
9. 最新技術の活用困難
最新技術を取り入れることが困難で、システムの機能や性能が向上しにくくなります。最新の技術を活用することで、業務効率化や顧客満足度向上など様々なメリットを得ることができますが、レガシーシステムではそれが難しい場合があります。
10. 環境負荷
古い技術で作られているため、多くの電力を消費し、環境負荷が大きくなります。近年は環境への配慮が重要視されており、企業は環境負荷の低減も求められています。
このように、レガシーシステムは様々な問題を抱えており、企業にとって大きなリスクとなります。放置すれば、システム障害や情報漏洩、ビジネスチャンスの損失など、深刻な事態を招く可能性があります。
レガシーシステムから脱却する方法
レガシーシステムは、現代企業にとって様々な問題を引き起こす大きな課題です。しかし、適切な対策を講じることで、レガシーシステムから脱却し、企業の競争力強化につなげることができます。
レガシーシステムから脱却する方法は、大きく分けて以下の4つが考えられます。
1. レガシーシステムの全面移行
最新システムに全面移行することで、根本的な解決を図ります。レガシーシステムが抱えるすべての問題を解決できる可能性がありますが、多額の費用と時間がかかるため、現実的ではないケースも多くあります。
メリット:
- レガシーシステムが抱えるすべての問題を解決できる
- 最新の機能や性能を活かせる
- 将来的にシステム改修や拡張が容易になる
デメリット:
- 多額の費用と時間がかかる
- システム移行に伴う業務負荷が大きい
- データ移行やシステムテストに時間がかかる
2. 部分的な移行・更新
重要な機能だけを最新システムに移行したり、レガシーシステムを部分的に更新したりします。費用と時間を抑えつつ、課題解決を目指すことができます。
メリット:
- 全面移行に比べて費用と時間が抑えられる
- 重要機能を最新化することで、業務効率化を図れる
- 段階的に移行することで、リスクを低減できる
デメリット:
- システム全体が最新化されないため、将来的に問題が発生する可能性がある
- 異なるシステムが混在するため、運用が複雑になる
- データ連携やシステム間連携が困難になる場合がある
3. エミュレーション
エミュレーションとは、あるシステムや機器の動作を別のシステムや機器上で再現する技術です。新しいシステム上でレガシーシステムの動作を再現する技術を活用します。レガシーシステムを残しつつ、最新環境で運用することができます。
メリット:
- レガシーシステムをそのまま残せるため、移行コストを抑えられる
- 既存の業務プロセスを変更する必要がない
- レガシーシステムとの互換性を維持できる
デメリット:
- 新しいシステム上でレガシーシステムを動作させるため、パフォーマンスが低下する可能性がある
- レガシーシステムの保守・運用が継続的に必要になる
- 将来的にエミュレーション環境の維持が困難になる可能性がある
4. クラウド移行
レガシーシステムをクラウドに移行することで、メンテナンスコストを削減し、セキュリティを強化することができます。
メリット:
- メンテナンスコストを削減できる
- セキュリティを強化できる
- スケーラビリティや可用性を向上できる
- 最新の機能やサービスを簡単に利用できる
デメリット:
- クラウドサービスの利用料金が発生する
- レガシーシステムをクラウド環境で動作させるために、改修が必要になる場合がある
- データセキュリティ対策を強化する必要がある
どの方法方法を選択するべきかは企業の状況や予算、経営戦略によって異なります。
レガシーシステムからの脱却を試みる際に注意するべきポイント
レガシーシステムからの脱却を試みる際に注意するべきポイントと、これらが不十分な場合起こりうる問題をいくつかご紹介いたします。
- 経営層とIT部門の連携: レガシーシステムの問題点を共有し、経営層とIT部門が協力して解決策を検討する必要があります。
⇒意思決定の遅延とコスト増加、システムの失敗と損失、組織全体の混乱と士気の低下 - 現状分析: レガシーシステムの現状を把握し、抱えている問題点を明確にする必要があります。
⇒適切な脱却方法の選定ミス、システム要件定義の誤り、費用と時間の超過 - 要件定義: 新しいシステムに求められる要件を明確に定義する必要があります。
- コスト・ベネフィット分析: それぞれの脱却方法の費用と効果を比較検討する必要があります。
⇒投資対効果の低下、予算不足、経営層の納得を得られない - リスク管理: 移行に伴うリスクを洗い出し、対策を講じる必要があります。
⇒システム障害、情報漏洩、業務混乱
まとめ
レガシーシステム脱却は、容易ではありません。しかし、適切な対策を講じることで、企業の競争力強化につなげることができます。今回紹介した内容を参考に、自社の状況に合った脱却方法を検討し、成功に向けて取り組んでいきましょう。
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